何枚必要なのか:S/N の算術から出る答え

スタッキングの背後にある算術:200 枚が 100 枚の 2 倍良くはない理由、時間を足しても効かなくなるのはいつか、そしてどの限界に当たったかの見分け方。

「撮れるだけ撮れ」が定番のアドバイスです。間違いというより、役に立ちません。セッションの計画の立て方も、いつやめればいいかも、先週の 2 時間が今週の 3 時間より良く仕上がった理由も教えてくれないからです。

ちゃんとした答えはあり、それは一つの関係から出てきます。

算術

信号はフレーム数に比例して積み上がります。ノイズはランダムなので一部が打ち消し合い、平方根でしか増えません。そのため S/N 比は √N で改善します。

ここから、多くの人が意外に感じる結果が出てきます。

枚数1 枚に対する改善
42 倍
164 倍
648 倍
25616 倍
102432 倍

品質を 2 倍にするたびに、枚数は 4 倍必要になります。

だから 10 枚から 40 枚にすると大きく変わり、200 枚から 260 枚にしても違いは見えません。データを 30 % 足して改善は 14 %、そして 14 % は写真で目がはっきり気づける差を下回ります。何かがおかしかったわけではなく、改善が小さすぎて見えなかっただけです。

実用的なルールとしては、目に見えて一段良くしたいなら、4 倍にする計画を立てることです。50 枚でまずまずの結果が出たなら、次に違いが見えるのは 200 枚です。70 枚では足りません。

読み出しノイズがサブ露光時間を決める

平均しても同じようには消えない、もう一つのノイズ源があります。センサーを読み出すたびに一定のノイズが加わり、それは露出時間に関係しません。5 秒のフレームも 500 秒のフレームも、一回分ずつ加わります。

つまり同じ総積算時間でも、読み出しノイズの量は何枚に分けて撮ったかに比例します。

  • 90 分を 10 秒サブ 540 枚で撮る → 読み出しノイズ 540 回分
  • 90 分を 5 分サブ 18 枚で撮る → 18 回分

集めた光は同じで、読み出しノイズはおよそ 30 分の 1 です。

総時間が同じでも、淡い対象でガイド付きの機材がスマート望遠鏡より良い結果を出すのはこのためです。集める光子が多いわけではありません。センサーを読み出す回数がずっと少ないのです。

ですから、架台が確実に追尾できる範囲で最も長いサブ露光を使ってください。これは処理ではなく機材の問題で、淡い対象では他の何よりも効きます。

もちろん逆方向の事情もあります。流れた 300 秒のフレームは使えませんし、フレームを一枚失うほうが、少しノイズの多いフレームより損失は大きくなります。採用率が高く保てる長さを見つけて、それを使い続けてください。

「十分」の目安

まずまずの空を前提にした、おおまかな目安です。

明るい対象(オリオン大星雲の中心、プレアデス、アンドロメダの中心、月):20〜50 枚で良い結果が得られます。ノイズフロアに悩まされないほど明るいので、時間を足してもあまり変わりません。

中くらいの対象(メシエ天体の銀河や星雲の大半):100〜300 枚。√N の曲線がよく効く範囲で、1 時間足すごとにまだ差が見えます。

淡い対象(星雲の外縁、IFN(銀河系外縁の分子雲)、淡い潮汐尾):500 枚以上。ただしここでは、枚数よりサブ露光時間と空の質のほうが大事です。読み出しノイズや空の明るさで限界が決まっているなら、枚数だけでは解決しません。

惑星 はまったく別の世界です。何千枚も必要になります。大半を捨てるからです。ラッキーイメージングでは最もシャープな一部を残すので、5,000 枚の 10 % なら良いフレームが 500 枚残ります。効いているのはインテグレーションではなく選別です。

三つの限界と、その見分け方

フレームを足して効果があるのは、フレーム数が限界になっている場合だけです。よくある三つの限界は、フレーム数以外のところにあります。

読み出しノイズ。 サブが非常に短いと、ノイズフロアは空の光子ではなく読み出しで決まります。フレームを足せば少しずつは良くなりますが、そのたびに一定のノイズを払い続けることになります。症状:積算時間は長いのに背景のノイズが減らず、サブが短い。対策:枚数を増やすのではなく、サブを長くする。

空の明るさ。 明るい空の下では背景が支配的で、淡い信号はその上に出てこないことがあります。S/N は √N で改善し続けますが、検出できないものを √N 倍しても検出できません。症状:背景が明るく、いくら積算しても淡い部分が出てこない。対策:より暗い空へ行くか、光害の大半をカットするナローバンドフィルターを使う。

位置合わせ。 レジストレーションに半ピクセルの誤差が残っていると、フレームを足すたびに少しずれたデータが増えるだけです。スタックは滑らかになっても、シャープにはなりません。症状:枚数を増やすとノイズは下がるのにディテールは良くならず、星がピントの状態に見合わない甘さに見える。対策:レジストレーションが回転を扱えるか確認する。これはすべてのスマート望遠鏡を含む、経緯台全般で重要です。

最後の一つは、空のせいにする前に確認してください。シーイングが悪いときとまったく同じに見えるので、これに気づかないまま何シーズンも無駄にする人がいます。

一回の処理で確かめる方法

セッションをスタックします。次にその半分(1 枚おき)をスタックし、同じストレッチで二つを比べます。

  • 全部使ったほうが明らかに良い:フレームが効いています。もっと撮ってください。
  • ほとんど区別がつかない:上の三つの限界のどれかに当たっています。枚数を増やしても直らないので、別の何かを変えてください。

処理が一回増えるだけで、どんな経験則よりも多くのことがわかります。自分のデータ、自分の空、自分の機材で確かめた結果だからです。

除外には最低限の枚数が必要

生の枚数がそのまま効いてくるものが一つあります。外れ値の除外です。

8 枚では分布を推定できません。どのクリッピング法もサンプルが少なすぎる状態で動くことになり、強い除外は外れ値を取るつもりで本物の信号まで捨ててしまいます。画像はきれいに見えるのに、淡いディテールが目立たないまま失われています。壊れたようには見えず、少し物足りなく見えるだけで、その理由は画面のどこにも出てきません。

実用的な目安は次のとおりです。

  • 8 枚未満: 単純平均か中央値。人工衛星の軌跡は残るものと割り切る。安全に除外することはできません。
  • 8〜15 枚: ウィンザー化クリッピング。外れ値を捨てるのではなく、大多数の値の側へ寄せます。
  • 15 枚超: 通常のシグマクリッピングが安全に使えます。
  • 15 枚超で透明度が変化している: 線形フィット・クリッピング。スタック全体にわたるゆるやかな変化を前提とし、そこから外れたものだけを除きます。

最後のケースは覚えておくと役に立ちます。薄雲が入ってきたり、対象が光害の明るい方向へ沈んでいったりすると、フレームは実際に異なってきます。シグマクリッピングは範囲の両端のフレームを外れ値として扱いますが、暗い側のフレームはその夜で一番澄んでいたフレームであることが多いのです。間違ったデータだと決めつける手法のせいで、一番良いデータを失うことになります。

結局、何枚撮るか

  • まずサブ露光時間を決める。架台が確実に追尾できる最長の時間です。これで読み出しノイズが決まり、淡い対象では読み出しノイズが結果を大きく左右します。
  • 次に枚数を 4 倍単位で考える。50 → 200 → 800。20 % 足すのは計画とは言えません。
  • きちんとした外れ値の除外をしたいなら、最低 15 枚。
  • この記事も含めて、上のどれも鵜呑みにせず、半分スタックのテストで確かめる。

半分のスタックと全部のスタックが同じに見えたら、次の晴れた夜は同じ対象を撮り足すより、別の対象に使ってください。

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